印材について
黒水牛は牛の角から作ります
黒水牛は下図1の様に牛の角の空洞部と先端をカットし、真中の部分の、しかも神経の通り道(芯)の部分(図中破線)のみを図2の様に切り出して使います。その為通常は一本の角から一本の印材しか採れません。
日本では先端の部分は使い途がないので不要となります。中国では、先端の部分はボタンに、空洞部の端材は美容器具や美術工芸品等、様々な用途に使われています。
日本では図2の様にカットしたものを輸入していますが、中国では図1の状態で輸入されています。
その為中国の方が輸入するのに有利であり、実際輸入競争に於ては、日本は殆ど中国に取られてしまっているのが現状のようであります。
牛の角はベトナム、中国、インド、アフリカ、オーストラリア等から集められます。概してアジア産の農耕用の牛の角は、組織が緻密で細かく、印材に適していますが、アフリカ、オーストラリアの牧畜用の牛の角の組織は粗く、ヒビが入りやすくなっています。
最近では農耕が機械化し、農耕用の牛が激減している為、良い材料が不足しています。その為黒水牛印材の価格は上昇していて、今後もこの傾向は続くものと思われます。
黒水牛印材の等級
黒水牛印材の等級は芯の大きさと芯の部位によって決まります
上上芯(極上)
点の様に小さい芯がセンターの部位にある
バフの状態も良くて漆黒の輝きがある
100本中1~2本
上芯(上)
バフの状態も良くて漆黒の輝きがある
- A:小さい芯がセンターからほんの少しずれて存在する
- B:やや大きい芯がセンターの部位にある
100本中4~5本
中芯(中)
- A:小さい芯が2つある
- B:小さい芯がセンターから少しずれて存在する
- C:大きな芯がセンターの部位にある
100本中約20本
並芯(並)
- A:3つ以上の芯
- B:長い裂けたような芯
- C:小さい芯が端の部位にある
100本中約70本
上上芯や上芯は最近はほとんど採れなくなって来ています。それだけ希少価値が高く、当然のことながら、染めや、バフも丁寧に行われているので、艶も良く、すばらしい印材に仕上がっています。値段も、それなりに高くなっています。
黒水牛の製造過程
施盤工程によって
円筒形に丸められる
「頭つけ」と「面つけ」を行う
灰色の印材を真黒に染め上げる
漆黒の美しい艶が出るように研き上げる
彫刻上の問題
黒水牛という印材は象牙と同様、扱いが難しい印材です
- 乾燥に弱くヒビが入り易い
- 彫刻中にヒビ割れが起きる
- 倉庫に長い間保管するとヒビ割れや虫喰いが発生する
- 小キズが入り易い
- バフが丁寧でないと艶が出ない
「1.乾燥に弱くヒビが入り易い」や「3.倉庫の長期保管によるヒビ割れ」については保管の問題で注意すれば防ぐことが出来ますが、「2.彫刻中のヒビ割れ」は大変やっかいな問題です。
「4.小キズが入り易い」や「5.バフが丁寧でないと艶が出ない」については入荷した時に既に問題があります。
弊社の企業努力
弊社は長年の工夫と研究によってこれらの困難な問題を克服して参りました。上記の中で一番やっかいなのは「2.彫刻中のヒビ割れ」の問題です。
この問題を弊社は既にクリアーしています。
仕上げ加工を施すことによって、ヒビ割れを防いでいます。
「4.小キズが入り易い」については一本ずつ小キズを修復しています。
「5.バフが丁寧でないと艶が出ない」についてはメーカーの責任ですが、弊社では一本ずつ手磨によって丁寧に艶を出しています。